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経営戦略と人事戦略の連動とは 事業成長を実現する戦略人事の実践ガイド
2026.08.14 更新日:2026.08.06 採用戦略

経営戦略と人事戦略の連動とは 事業成長を実現する戦略人事の実践ガイド

人事施策が場当たり的になっており、採用や育成、配置がバラバラに動いていると感じていませんか。一つひとつの施策に手間をかけても、思うような成果につながらず、工数だけが膨らんでいくケースは少なくありません。事業戦略は描けていても、それを実現する人材が揃わなければ、計画は絵に描いた餅で終わります。多くの企業では経営と人事、現場の間で方向性が揃っておらず、「何のための人事施策か」という根本的な問いが共有されていません。その結果、人事は経営に対して価値を発揮できず、単なるオペレーション部門としか見られない状況に陥りがちです。

そこで本記事では、人事を「コストセンター」から「戦略パートナー」へと引き上げるための考え方を整理します。経営戦略と人事戦略を連動させる方法や、戦略人事を実現するための具体的なフレームを解説していきましょう。

目次

経営戦略と人事戦略の連動とは何か

経営戦略と人事戦略の連動とは何か

経営戦略と人事戦略の連動は、戦略人事を語るうえでの出発点です。両者の関係を正しく理解することで、人事施策が単発で終わる状況から抜け出せます。ここでは、それぞれの定義と連動の意義について整理していきましょう。

経営戦略と人事戦略の定義

経営戦略とは、事業を通じて目指す方向性を示すものです。市場における立ち位置や競合との差別化、中長期での成長シナリオを定義します。一方の人事戦略は、経営戦略を実現するための人的資源の在り方を設計する役割を担います。具体的には、どんな人材を採用しどう育てて、どこに配置するかを決める指針です。

両者は本来、独立した存在ではありません。経営戦略が描くゴールに到達するための手段が、人事戦略だと位置づけられます。しかし実態として、人事戦略が経営から切り離されて運用される企業は多いものです。

なぜ両者の連動が求められるのか

事業を取り巻く環境は、年々変化のスピードを増しています。テクノロジーの進化や市場ニーズの変容により、必要な人材像も短期間で移り変わるためです。経営戦略だけを描いても、それを担う人材が揃っていなければ、戦略は実行に移せません。逆に、優秀な人材を採用できても、活躍する場が用意されていなければ早期離職を招きます。

経営と人事の連動は、こうしたミスマッチを防ぐ前提条件です。さらに、2023年3月期決算企業から有価証券報告書における人的資本・多様性関連情報の開示が求められるようになり、人事戦略が経営戦略や企業価値向上にどう結びつくかを説明する重要性も高まっています。投資家は経営戦略と人材戦略の整合性を重視しており、求職者も働き方や職場環境、成長機会などの情報を企業選びの判断材料にしています。

連動していない企業に起きる問題

経営戦略と人事戦略が連動していない企業では、以下のような問題が表面化します。

  • 現場で必要なスキルと採用基準がずれている(営業強化を掲げているのに技術職ばかり採用するなど)
  • 育成投資が事業ニーズと無関係に決まり、現場で使われないスキルにコストが流れる
  • 配置が適性ではなく空きポジション基準で行われる
  • 人事が「採用と労務の係」と見られ、戦略議論から外される

こうした状況が続くと組織全体のパフォーマンスが頭打ちになり、競合との差が広がっていきます。

経営戦略と人事戦略が分断される原因

経営戦略と人事戦略が分断される原因

連動の必要性は理解されていても、現場では分断が解消されないケースが多く見られます。背景には構造的な要因が存在しており、表面的な改善だけでは突破できません。ここでは分断を生む主な原因を整理していきます。

経営と人事の視座の違い

経営層と人事部門では、見ている時間軸や視座が大きく異なります。経営は3年先・5年先の事業ポートフォリオを描いている一方、人事は今期の採用充足率や離職率に追われており、扱う情報の粒度が根本的に異なるため、両者の会話はかみ合いにくいものです。経営から「優秀な人材を増やしてほしい」と言われても、具体的な事業計画や市場仮説が共有されなければ人事は動けません。結果として経営の意図を推測しながら施策を組むことになり、方向性がブレていくのです。視座を合わせる仕組みがない企業ほど、分断は深まっていきます。

人事がオペレーションに偏る構造

人事部門の業務は、給与計算や勤怠管理、入退社手続きなど止められない実務で構成されています。これらは企業運営に不可欠な業務である一方、戦略を考える時間を圧迫する要因にもなるでしょう。

多くの人事担当者は、日々のオペレーションで手一杯になり、経営との対話に充てる余力を失っています。さらに、人事評価の仕組みが「ミスなく業務を回すこと」を重視している場合、戦略的な発想は評価されにくくなる傾向にあります。こうした構造下では、人事が戦略パートナーへと変わろうとする動機が生まれません。オペレーションと戦略の役割を切り分ける設計が必要です。

戦略の抽象度と人事施策の乖離

経営戦略は、抽象度の高い言葉で語られることが少なくありません。「グローバルで戦える組織を作る」や「顧客起点の事業を強化する」といった表現は、方向性を示していても、人事施策に直結する具体性に欠けます。この抽象度を翻訳しないまま施策に落とすと、現場では「結局、何をすればいいのか」が見えなくなるでしょう。

逆に、人事側で勝手に解釈して施策を組むと、経営の意図と異なる結果を生むこともあります。両者をつなぐ翻訳機能が、戦略人事には不可欠です。この機能を担える人材や仕組みがない企業ほど、乖離が拡大していきます。

データと指標の不一致

経営が見ている指標と、人事が追っている指標が違うことも、分断の大きな原因です。経営は売上や利益率、顧客満足度などを重視するのに対し、人事は応募数や離職率を中心に据えています。両者の指標が連動していないため、人事施策の成果が経営にどう貢献したのかが説明できません。たとえば、離職率が下がったとしても、それが事業成長にどうつながったのかを示せなければ経営から評価されないのです。データドリブンな経営が進むほど、指標の不一致は致命的な問題となるでしょう。共通言語としての指標設計が、連動の起点となります。

経営戦略を人事戦略に落とし込む全体フレーム

経営戦略を人事戦略に落とし込む全体フレーム

経営戦略を人事戦略へと変換するには、体系的なフレームが必要になります。場当たり的な議論ではなく、順序立てた検討プロセスを通じて、両者を接続することが重要です。ここでは全体像と各ステップを解説します。

戦略連動の基本プロセス

戦略連動には、いくつかの定石となる流れがあります。最初に行うのは経営戦略の言語化と分解で、事業ポートフォリオや競争優位の源泉を整理し「何で勝つか」を明確にします。次にその戦略を実行するために必要なケイパビリティを洗い出し、人材像や組織構造へと落とし込みましょう。最後に採用・育成・配置などの個別施策へ展開します。プロセスを飛ばすと施策が経営から切り離されるため、順序を守ることが肝心です。

事業戦略から人材要件を導出する考え方

事業戦略から人材要件を導く際には、未来から逆算する視点が欠かせません。現状の延長線上で考えると、既存業務に最適化された人材像になりがちだからです。たとえば、新規事業として海外展開を計画しているなら、語学力や異文化対応力を持つ人材が必要になります。既存事業の効率化が課題なら、デジタル領域の知見を持つ人材が求められるでしょう。重要なのは、戦略目標から逆算してスキルセットを定義することです。さらに、必要なスキルを「いつまでに」「どれだけ」揃えるかという時間軸も組み込みます。要件が具体化されることで、採用と育成の方針が明確になります。

人材ポートフォリオ設計の基本

人材ポートフォリオは、組織全体の人材構成を可視化する考え方です。事業戦略に必要な人材をスキルや役割、雇用形態別に整理し、現状と理想のギャップを把握することが設計の出発点となります。今いる人材で何ができて何が足りないかを棚卸ししたうえで、補うべき領域を特定しましょう。コア人材と周辺人材の切り分けも重要で、すべてを正社員で抱える必要はなく、業務委託や派遣を組み合わせる選択肢もあります。柔軟な構成を意識するほど、変化への対応力は高まるでしょう。

中長期視点での人材戦略設計

人材戦略は3年から5年の中長期スパンで設計する必要があります。採用や育成には時間がかかるため、短期的な調整だけでは事業成長に追いつけないからです。来年の採用数を決めるだけでなく、3年後にどんな組織を作るかを起点にバックキャストする視点が欠かせません。シニア層の退職や若手の離職といった人口動態の変化も織り込みながら、複数のシナリオを想定した戦略を描きましょう。不確実性が高い時代こそ、柔軟性と一貫性を両立させた設計が戦略人事の真価を発揮します。

採用戦略への落とし込み

採用戦略への落とし込み

人事戦略の中でも、採用は経営戦略との接続が見えやすい領域です。事業計画に基づいて必要な人材を獲得することが、採用戦略の役割になります。ここでは戦略と採用をつなぐ実践方法を見ていきましょう。

戦略から採用要件を設計する方法

採用要件の設計は、事業戦略の解像度を上げることから始まります。どの事業をどのフェーズで、どの程度成長させるのかが定まっていなければ要件はぼやけたままです。

たとえば、新規事業の立ち上げ期であれば、ゼロイチを楽しめる起業家気質の人材が必要でしょう。既存事業のスケール期なら、仕組みづくりに長けたマネジャー層が重要です。フェーズと役割を明確にしたうえで、求める経験やスキル、価値観を言語化します。さらに、組織内のどのポジションで、誰の下で働くかも要件の一部です。粒度の高い要件設計が、ミスマッチを防ぐ第一歩となります。

採用ターゲットと市場のギャップ調整

理想の人材像を描いても、市場に存在しなければ採用できません。採用戦略では、要件と市場のギャップを冷静に見極める必要があります。たとえば、IT人材の獲得競争が激化する中で5年以上の経験者を求めても、応募は集まりにくいのが実情です。ギャップが大きい場合は、要件を再設定するか、別のアプローチを検討しましょう。経験者にこだわらず、ポテンシャル採用に切り替える選択肢もあります。育成前提の採用に方針を変えることで、母集団は一気に広がるでしょう。市場の現実を踏まえた要件調整が、採用成功の確率を高めます。

採用KPIの設計方法

採用活動のKPIは、最終的な事業成果につながる設計が望まれます。応募数や面接数だけでなく、入社後の活躍度合いまで含めて指標化することが重要です。たとえば、入社1年後の評価や定着率を採用KPIに組み込むと、量だけでなく質も追えるようになるでしょう。さらに、採用単価や採用リードタイムなど効率性の指標も併せて設定します。

各フェーズの歩留まりを可視化することで、改善ポイントが見えてきます。KPIは経営指標との接続を意識して設計しましょう。事業の成長率や売上目標と紐づいたKPIであれば、人事の貢献度を経営に示せます。

育成戦略への落とし込み

育成戦略への落とし込み

採用と並んで重要なのが、社員の育成です。事業戦略を実現するためには、既存社員のスキルアップも欠かせません。ここでは育成戦略を経営戦略と連動させる方法を解説します。

必要スキルと育成テーマの定義

育成テーマの設定は、事業戦略から必要スキルを逆算することから始まります。新規事業領域への進出なら専門知識、既存事業の競争力強化ならデータ活用や顧客対応スキルといった具合に、戦略の方向性によって優先すべき育成テーマは変わります。重要なのは、現場の声と経営の意図を両方反映させることです。現場だけの声を聞くと目の前の業務に閉じた研修になりがちで、経営だけの声を聞くと現場ニーズと乖離します。両者をつなぐ視点で育成テーマを設計することで、研修や教育投資の優先順位もはっきりするでしょう。

リスキリングと能力開発の設計

リスキリングは、事業環境の変化が激しい時代における戦略人事の中核施策です。既存社員が新しい役割やスキルを獲得することで、組織全体の対応力が向上します。設計の起点は対象者の現状スキルと目標スキルのギャップの明確化で、そのうえで座学だけでなく実践機会も組み合わせた学習設計が効果的でしょう。
たとえばデジタル人材の育成では、社内プロジェクトへの参加を組み込むと知識が定着しやすくなります。学んだスキルが現場で使われなければ投資は無駄になるため、学びを業務に還元する仕組みまでセットで設計することが、人材価値の最大化につながります。

育成KPIと評価の連動

育成施策の効果を測るには、KPIの設計が不可欠です。研修受講数や満足度だけでは事業への貢献度は見えず、スキル習得後の業務適用率や成果指標への影響まで測ることが望まれます。評価制度との連動も重要で、育成で身につけたスキルが評価対象になっていなければ社員の学習意欲は続きません。戦略上重要なスキルや行動を評価項目に組み込み、経営戦略が変われば評価項目も見直す柔軟性を持ちましょう。育成と評価が連動することで、組織全体の学習文化が育っていきます。

配置戦略への落とし込み

配置戦略への落とし込み

採用や育成と並んで、配置も人事戦略の重要な要素です。せっかく獲得した人材や育てたスキルも、適切な場所に配置されなければ力を発揮できません。ここでは配置戦略の考え方を整理します。

適材適所を実現する配置設計

適材適所の配置は、戦略人事の基本的な考え方です。個人の強みと組織のニーズを掛け合わせて、最適な配置を実現します。設計の起点は、各ポジションに必要な能力と、社員の保有スキルの可視化です。スキルマップやコンピテンシー評価などのツールを活用することで、マッチング精度が高まります。さらに、本人の希望や成長意向も配置の判断材料となるでしょう。

会社都合だけで動かすと、エンゲージメントの低下を招きます。本人との対話を通じて、納得感のある配置を実現しましょう。適材適所が機能すると、組織全体の生産性が大きく向上します。

ハイパフォーマーの配置戦略

組織のパフォーマンスを左右するのは、ハイパフォーマーの活躍度合いです。優秀な人材を最も成果に直結するポジションに配置することが、戦略人事の重要な役割といえます。ただし、短期的な業績だけを基準に動かすとモチベーションを損なうリスクがあるため、本人のキャリア志向を考慮することが欠かせません。また、ハイパフォーマーが特定の部署に偏ると組織全体のバランスが崩れるため、意図的に分散させて各部署のパフォーマンスを底上げする視点も持ちましょう。経営戦略上の重点領域には優秀な人材を積極的に投入しつつ、組織全体への目配りを忘れないことが大切です。

組織設計との連動

配置戦略は、組織設計とセットで考える必要があります。どんなに優れた人材を配置しても、組織構造が機能していなければ成果は出ません。組織設計では、事業戦略に応じた部門構成や指揮命令系統を設計します。新規事業を立ち上げるなら、専任チームを組成する選択肢もあるでしょう。既存事業の効率化なら、機能別の組織が適しているかもしれません。組織と人材を一体で設計することで、戦略の実行力が高まります。組織変更を頻繁に行う必要はありませんが、戦略の節目では構造を見直す勇気も必要です。柔軟な組織設計が、変化対応力の源泉となります。

経営戦略と人事戦略を連動させるためのKPI設計

経営戦略と人事戦略を連動させるためのKPI設計

戦略の連動を確かなものにするには、KPI設計が鍵を握ります。経営と人事が共通の指標で会話できる状態を作ることが、連動の実現条件です。ここではKPI設計の具体的なポイントを解説します。

経営KPIと人事KPIの接続方法

経営KPIと人事KPIをつなぐには、両者の因果関係を整理する作業が必要です。たとえば、売上目標を達成するために、何人の営業人材が必要かを逆算します。さらに、その人数を確保するために採用や育成、定着のKPIをどう設定するかを考えていきましょう。経営から人事へと指標を分解していくことで、貢献度が見える化されます。

ただし、すべてを定量化できるわけではありません。組織風土やエンゲージメントなど、定性的な要素も並行して捉える必要があります。定量と定性を組み合わせたKPI設計が、戦略人事の質を高めるのです。

人的資本指標の活用

人的資本経営の広がりとともに、人的資本指標の重要性が高まっています。離職率や研修投資額、ダイバーシティ指標などが開示の対象となっていますが、これらを単なる開示要件として捉えるのではなく、経営判断に活用する視点が大切です。エンゲージメントスコアの推移から組織改善の優先順位を決めたり、研修投資額と生産性の関係を分析して投資を最適化したりと、活用の幅は広くあります。人的資本指標は経営戦略と人事戦略をつなぐ共通言語であり、投資家や求職者への発信材料としても戦略性のある設計が求められるでしょう。

データドリブン人事の実践

データドリブン人事は、勘や経験に頼らない意思決定を可能にします。採用や育成、配置の各場面でデータを活用することで、施策の精度が高まるでしょう。たとえば、過去の採用データを分析することで、活躍する人材の特徴が見えてきます。離職リスクの高い社員を早期に察知できれば、引き留め施策を打てるでしょう。

データ活用の前提となるのが、人事データの整備です。バラバラのシステムに散在しているデータを統合し、分析できる状態を作る必要があります。ツール導入だけでなく、分析できる人材の育成も並行して進めましょう。データドリブンな人事が、戦略パートナーへの第一歩になります。

連動を実現するための組織と体制

連動を実現するための組織と体制

戦略連動を仕組みとして機能させるには、組織体制の設計が欠かせません。仕組みがなければ、個人の頑張りに依存した運用に終わってしまうでしょう。ここでは連動を支える組織のあり方を考えていきます。

戦略人事に求められる役割

戦略人事を担う人材には、複数の役割が求められます。経営の言葉を理解し、人事施策に翻訳する能力が第一の役割です。さらに、現場の課題を吸い上げ、経営に伝える橋渡しの機能も担います。HRビジネスパートナー、いわゆるHRBPと呼ばれる職種は、まさにこの役割を果たすものです。事業部門に張り付き、現場の課題と経営戦略の両方を理解しながら、人事施策を提案します。戦略人事の人材は、ビジネス理解と人事専門性を兼ね備える必要があるのです。育成には時間がかかるため、外部からの登用や外部人材の活用も視野に入ります。

経営と人事のコミュニケーション設計

戦略連動を実現するには、経営と人事の対話を仕組み化することが重要です。経営会議に人事責任者が常に参加し、戦略議論に加わる体制が望ましいでしょう。加えて、経営トップと人事責任者が事業の方向性と人材戦略を定期的に擦り合わせる一対一の場も整えておきたいところです。対話の頻度と質が連動の強さを左右するため、形式的な報告会ではなく本音で議論できる関係性を築くことが大切だといえます。経営側が戦略情報をオープンに共有しない限り、情報の非対称性という見えない壁は消えません。

現場を巻き込む推進方法

戦略人事は人事部門だけで完結するものではなく、各部門の管理職を巻き込むことで施策の実効性が高まります。現場の管理職はメンバーの状態を最もよく把握している存在であり、彼らとの連携なしに効果的な人事施策は実行できません。具体的には戦略の意図を管理職に丁寧に伝え、1on1や評価面談の質を高める研修も有効でしょう。現場の声を人事施策にフィードバックする仕組みも作り、トップダウンとボトムアップの両方が機能して初めて戦略人事は定着します。

よくある失敗とその対策

よくある失敗とその対策

戦略連動を進める過程では、さまざまな落とし穴があります。多くの企業が同じような失敗を経験しており、事前に知っておくことで回避が可能です。ここでは代表的な失敗パターンと対策を整理します。

戦略が抽象的で落とし込めない

【症状例】「DX推進」「グローバル化」といった経営戦略の言葉が並ぶが、現場では何をすべきか誰も分からない状態が続いている。

経営戦略が抽象的なまま放置されると、人事施策に落とし込めません。対策としては、戦略を分解する作業を経営と人事で一緒に行うことが有効です。事業ごと・部門ごと・職種ごとに戦略の意味を翻訳し、3年後の組織の姿を具体的に描くワークショップも効果的でしょう。理想の組織像から逆算して必要な人材や能力を導き出すことで、施策の精度が上がります。

人事施策が単発で終わる

【症状例】研修制度を作っても運用が続かない、評価制度を変えても定着しない、という状況が繰り返されている。

背景には施策同士の連携不足があります。採用・育成・評価・配置がそれぞれ独立して設計されており、全体最適が図られていないのです。対策としては、経営戦略を起点に各施策がどう連携するかを明文化したグランドデザインを描くことです。一度作って終わりではなく、効果測定と改善サイクルを組み込んだ前提で設計しましょう。

KPIが形骸化する

【症状例】KPIの数値は達成しているのに、事業成果につながっている実感がない。数値を追うこと自体が目的化している。

KPIを設定しても、数値を追うこと自体が目的化し本来の戦略意図が失われることがあります。たとえば応募数を増やすことに注力するあまり、質の低い応募者が増えて選考工数が膨らむケースが典型例です。対策としては、KPIの背景にある仮説を明文化することが重要で、なぜこの指標を追うのかが共有されていれば形骸化を防げます。事業フェーズや市場環境が変われば追うべき指標も変わるため、定期的な見直しも欠かせません。KPIは管理ツールではなく、対話のきっかけとして活用する視点を持ちましょう。

経営の関与が弱い

【症状例】人事施策を提案しても経営会議で後回しにされる、または「人事のことは人事に任せる」という姿勢が続いている。

経営トップが人事戦略にコミットしている企業ほど組織のパフォーマンスは高くなります。対策としては、経営会議で人事議題を定期的に扱う仕組みを作り、経営トップ自身が採用面接に参加するなど現場感を持ち続ける工夫も大切です。経営の関与を引き出すのは人事側の働きかけ次第でもあり、両者の主体的な歩み寄りが連動を機能させます。

経営戦略と人事戦略の連動を加速させる外部活用

経営戦略と人事戦略の連動を加速させる外部活用

戦略連動を社内だけで実現するのは、簡単なことではありません。専門知見や客観的視点を補うために、外部活用を検討する企業も増えています。ここでは外部活用のメリットと判断基準を解説します。

コンサルティング活用のメリット

人事コンサルティングを活用するメリットは、専門知見と外部視点の両方を得られることです。社内では気づきにくい構造的な課題を、第三者の視点で指摘してもらえます。さらに、他社事例の蓄積を活用することで、自社に最適な解決策を早く見つけられます。社内のリソースだけで進めようとすると、試行錯誤に時間がかかりがちです。コンサルティングを通じて、成功と失敗のパターンを学べることは大きな価値となります。また、外部の専門家が関与することで、経営との議論にも厚みが出ます。社内の人事担当者だけでは難しい、経営層との対等な対話が可能になるのです。

外部活用の判断基準

外部活用の判断には以下の観点があります。

  • 社内に戦略人事の経験者がいない、またはリソースが不足している
  • 経営戦略の根本から見直す必要があり、難易度・複雑性が高い
  • 短期間で成果を出す必要があり、スピード感が求められる
  • 社内の人間関係に縛られない客観的な視点が必要

複数当てはまるほど外部活用の優先度は高まります。

失敗しないパートナー選定

戦略人事のパートナーを選ぶ際は、採用代行とは異なる基準で見極める必要があります。まず確認すべきは、経営戦略の議論に加われる視座があるかどうかです。提案書を作って終わりではなく、実行フェーズまで伴走できるかも重要な判断材料となります。担当者が経営層と対等に議論できる知見を持ちながら、現場とも協働できる柔軟性を備えているかを面談で見極めましょう。また、自社と似た業界・規模での支援実績があるかも確認しておくと安心です。複数社を比較検討し、単なるコンサルタントではなく戦略パートナーとして機能できる会社を選ぶことが成功への近道となります。

まとめ 人事戦略の質が経営戦略の実現度を決める

経営戦略と人事戦略の連動は、事業成長を実現するうえで欠かせないテーマです。両者が分断されたままでは、どれだけ優れた戦略を描いても実行段階で力尽きてしまいます。連動を実現するには経営戦略を人材要件へと翻訳するプロセスが必要であり、採用・育成・配置の各施策を一貫した思想で設計することも欠かせません。KPIの接続や組織体制の整備、データ活用といった土台作りが、連動を支える基盤となります。
戦略人事は一朝一夕に実現できるものではありません。経営と人事が継続的に対話し、施策を磨き続ける姿勢が問われます。人事を「コストセンター」から「戦略パートナー」へと進化させることが、企業の成長を加速させる鍵となるでしょう。

オールイン株式会社の「ストラテジンジ」は、経営戦略から逆算したHR戦略コンサルティングと採用代行を一気通貫で支援するサービスです。500社以上の支援実績をもとに、戦略立案から現場オペレーションまで伴走します。人事を戦略パートナーへと進化させたい企業様は、ぜひお気軽にお問い合わせください

Writer
前田 優一 / Yuichi Maeda
Writer
前田 優一 / Yuichi Maeda
HRブランド戦略・HR戦略コンサルティングを中心に500社以上を支援するオールイン株式会社の代表取締役。19歳で営業デビュー後、22歳で約2,000人規模の組織にて最短最年少で年間最優秀営業賞・新規王を受賞。2022年にはプロデューサーとして映画製作も手掛け、現在はHR×映画の新規事業に取り組んでいる。
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