AI動画制作に補助金は使えるのか

結論からいえば、AI動画制作に補助金を使える可能性はあります。ただし、制度の仕組みを誤解したまま進めると申請そのものが成立しません。まずは前提となる考え方を確認していきましょう。
AI動画専用の補助金があるわけではない
2026年9月時点で、「AI動画制作補助金」という名称の国の制度は存在しません。AI動画に使えるのは、ITツール導入や販路開拓、新事業進出といった既存の補助金です。つまり、動画制作という手段ではなく、その先にある事業目的に対して補助金が支給される仕組みになっています。
対象になるかはAIの使用有無ではなく事業目的と経費で決まる
AIを利用しているという事実だけで補助対象になったり、審査で自動的に有利になったりするわけではありません。 問われるのは、その動画が売上拡大や生産性向上といった事業目的にどう結びつくかです。たとえば同じ商品紹介動画でも、販路開拓の計画に位置づければ持続化補助金の対象になり得る一方、目的が曖昧なまま「AIで作る」と書いても評価されにくくなります。
ツール導入と動画制作の外注では検討する制度が異なる
AI動画生成ツールを契約して社内で制作する場合と、制作会社へ依頼する場合では検討すべき制度が分かれます。ツール導入なら、デジタル化・AI導入補助金が第一候補になり、他方で企画から納品までを外注するなら、広報費や外注費を対象に含む持続化補助金などが候補です。
対象経費でも事業との必要性を説明できなければ認められない
公募要領に記載された経費区分に当てはまるだけでは、補助は確定しません。動画編集ソフトの利用料が対象区分に含まれていても、事業計画と無関係に見えれば減額や対象外の判断が下されるでしょう。事業課題と動画の役割、さらに経費との関係を一本の線でつなぐ説明が求められます。
目的別に候補となる補助金を絞り込む

前提を押さえたところで、次は自社の目的に合う制度を絞り込みましょう。ここでは、目的ごとに「まず候補になる補助金はどれか」を簡潔に案内します。
AI動画ツールを導入して制作を内製化したい場合
社内でAI動画ツールを使い続けて制作を内製化したいなら、デジタル化・AI導入補助金が候補になります。労働生産性の向上を目的に、AIを含むITツールを導入する中小企業を支援する制度です。ツールの利用料や導入設定、操作研修の費用まで対象に含まれる可能性がありますが、申請できるのは事務局に登録されたITツールのみになります。
商品・サービスの販路開拓動画を外注したい場合
商品やサービスを売るための動画を制作会社へ外注する場合は、小規模事業者持続化補助金が候補です。経営計画に基づく販路開拓の取り組みを支援する制度で、広報費やウェブサイト関連費に動画制作を位置づけられます。小規模事業者向けである点と、補助上限が比較的小さい点は認識しておきましょう。
AI動画を活用した新製品・新サービスを開発したい場合
AI動画そのものを組み込んだ新製品や新サービスを開発するなら、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の革新的新製品・サービス枠が候補に挙げられます。2026年度からものづくり補助金と新事業進出補助金が統合され、この名称で公募されている制度です。技術的な革新性のある製品・サービス開発が求められるため、要件のハードルは高めになります。
海外向け動画で新たな販路を開拓したい場合
海外市場向けの動画を制作して輸出を強化したい事業者は、同じ新事業進出・ものづくり商業サービス補助金のグローバル枠をチェックしましょう。海外市場開拓に向けた国内の輸出体制強化を支援する枠で、通訳・翻訳費や海外旅費も経費区分に含まれています。ただし、機械装置・システム構築費または建物費が必須経費とされており、動画制作費だけを申請する制度ではありません。
国の制度が合わず自治体の補助金を探したい場合
国の制度は要件が厳格で、採用動画やブランディング動画のように販路開拓と結びつけにくい用途では合わないことがあります。そのような場合は、都道府県や市区町村が独自に実施する補助金を探してみてください。対象地域や業種が限定されるため、自社の所在地で使える制度を個別に確認する必要があります。
AI動画制作で検討できる補助金を比較

候補が見えてきたら、各制度の具体的な条件を比べて自社が実際に利用できるか判断しましょう。なお、補助金の内容は公募回ごとに改訂される場合もあるため、申請前には必ず公式サイトで最新の公募要領を確認してください。
対象者・事業目的・対象経費・補助規模で比較する
制度を比較する軸は主に4つ挙げられます。1つ目は従業員数や資本金といった制度ごとの対象者、次が生産性向上・販路開拓・新事業といった事業目的です。その他に対象経費や補助規模(補助率・上限額)も念頭に置き比較を行いましょう。
デジタル化・AI導入補助金|登録ITツールによる業務効率化に向く
デジタル化・AI導入補助金は、IT導入補助金が2026年に名称を変えた制度です。中小企業・小規模事業者が労働生産性の向上を目的に、登録されたITツールを導入する費用を支援します。通常枠の補助率は原則1/2以内で、補助額は1プロセス以上のツールで5万円以上150万円未満、4プロセス以上なら150万円以上450万円以下です。残りの半分以上は自己負担になる点を踏まえて、導入規模を決めましょう。
AI動画生成ツールを申請する場合、そのツールがITツール検索に登録されているかをまず確認してください。申請はIT導入支援事業者と共同で行い、事業者単独では申請できません。
小規模事業者持続化補助金|販路開拓に必要な動画制作に向く
小規模事業者持続化補助金は、商工会・商工会議所の支援を受けて経営計画を作成し、販路開拓に取り組む小規模事業者を支援する制度です。対象は商業・サービス業で従業員5人以下(宿泊業・娯楽業は20人以下 )、製造業その他で20人以下の事業者に限られます。補助率は2/3のため、経費の1/3は自己負担です。補助上限は50万円が基本で、インボイス特例や賃金引上げ特例を満たすと、最大250万円まで引き上げられます。動画制作費は広報費またはウェブサイト関連費に該当し得ますが、第20回公募からはそれぞれ上限30万円(税込)となり、これらの経費だけでは申請できなくなりました。第20回の申請受付は2026年11月5日から12月15日までの予定です。
ものづくり補助金|新製品・新サービス開発を伴う場合に検討する
従来のものづくり補助金は、第23次公募が2026年5月に申請受付を終了しました。その後は新事業進出補助金と統合され、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の革新的新製品・サービス枠として引き継がれています。この枠は、自社の技術力を生かして革新的な新製品・新サービスを開発する取り組みが対象です。
補助率は中小企業で1/2(地域別最低賃金引上げ特例で2/3 )、小規模事業者で2/3となり、補助上限は従業員数に応じて750万円から2,500万円まで設定されています。外注費やクラウドサービス利用費も経費区分に含まれますが、機械装置・システム構築費が必須のため、AI動画の制作システム構築を伴う計画でなければ適合しにくいでしょう。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金|既存事業と異なる新規事業への投資に向く
同じく新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の新事業進出枠は、既存事業と異なる新市場や高付加価値事業への進出を支援する枠です。補助率は中小企業で1/2、補助上限は従業員数に応じて2,500万円から7,000万円で、賃上げ特例を適用すると最大9,000万円になります。
対象経費には機械装置・システム構築費や建物費のほか、外注費やクラウドサービス利用費、広告宣伝・販売促進費が含まれる仕組みです。ただし、広告宣伝・販売促進費は補助事業の売上見込みの5%まで、外注費は補助対象経費総額の1/4までという上限があります。補助下限は750万円と大きく、付加価値額や賃上げの要件も課される点に注意が必要です。
自治体独自の補助金|対象地域・業種・募集期間を確認する
自治体の補助金は、国の制度と比べて要件が柔軟な反面、条件は地域ごとに大きく異なります。確認したいのは、対象地域と業種、募集期間に加えて動画制作費が経費区分に含まれるかどうかです。また、国の補助金との併用可否も確認しておきましょう。
制度別に見るAI動画制作の補助対象経費

制度の全体像を把握したら、次は自社が支払う費用のどこまでが補助対象になるのかを見ていきましょう。
AI動画生成ツールや編集ソフトの利用料
AI動画生成ツールや編集ソフトの利用料は、デジタル化・AI導入補助金であればソフトウェア購入費やクラウド利用料として対象になる可能性があります。ただし、条件はITツール検索に登録されたツールであることです。登録の有無はツール名だけでは判断できないため、IT導入支援事業者に確認する必要があります。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、補助事業専用のクラウドサービス利用費として計上できることも考えられます。
クラウドサービスの導入費と対象期間中の利用料
クラウド型のAI動画ツールの費用は、初期導入費と月額または年額の利用料に分かれるのが一般的です。デジタル化・AI導入補助金では、クラウド利用料が最大2年分まで認められています。ただし、基本的に交付決定前の契約分や事業期間終了後の利用料は含まれません。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金でも、対象となるのは補助事業実施期間内に支払いが完了した分だけです。
企画・撮影・編集を依頼する外注費
動画の企画から撮影、編集までを制作会社へ依頼する外注費は、制度によって経費区分が変わります。持続化補助金では、販路開拓のための商品・サービス紹介動画であれば広報費として計上できる可能性があり、他方で、デジタル化・AI導入補助金は登録ITツールの導入が対象のため、制作会社への外注費は基本的に対象外です。
導入設定・操作研修・運用支援費
ツールを導入しただけでは動画は完成しません。デジタル化・AI導入補助金では、導入設定やマニュアル作成、導入研修や保守サポートといった役務費も対象経費に含まれています。ただし、汎用的なAI活用セミナーの受講料や、ツールと無関係な研修は対象になりません。
パソコン・撮影機材・汎用品など対象外になりやすい費用
高性能なパソコンやカメラ、照明などの撮影機材は多くの制度で対象外になりやすい費用です。デジタル化・AI導入補助金の通常枠では、ハードウェアが対象に含まれていません。持続化補助金でも、使途が特定できない汎用品は対象外です。動画制作に機材投資が不可欠な場合は、自己資金で賄う前提で予算を組むようにしましょう。
AIツールや外注費が対象か申請前に確認する方法
対象可否を確実に判断するには、3つの手順を踏みましょう。まず最新の公募要領で経費区分と対象外の例を読み込みます。次にデジタル化・AI導入補助金であればITツール検索で該当ツールの登録状況を調べ、最後に事務局や商工会議所、IT導入支援事業者へ経費内容を示して相談します。
AI動画を内製するか制作会社へ外注するか

対象経費を把握すると、内製と外注のどちらを選ぶかで使える制度も自己負担額も変わることが分かります。ここでは、制作方法を決めるための判断軸を整理します。
継続的に動画を量産するならツール導入を検討する
月に何本も動画を作り続ける計画があるなら、AI動画ツールの導入による内製化が向いています。デジタル化・AI導入補助金を活用すれば、初期費用と2年分までの利用料の負担を軽くすることが可能です。ただし、担当者の確保と学習時間が必要となります。
品質や成果を優先するなら制作会社への外注を検討する
会社の顔となるブランディング動画や、商談で使う高品質な製品紹介動画は制作会社への外注が適しています。近年は生成AIを制作工程に組み込み、短納期で仕上げる制作会社も増えてきました。外注費を補助対象にするなら、持続化補助金の広報費などが検討対象になります。
企画を外注し、編集や量産を内製する方法もある
内製と外注は二者択一ではありません。企画と初回の制作を専門会社に依頼し、その後の編集や派生動画の量産を自社ツールで行う方法もあります。補助金の観点では、外注費とツール利用料を別々の制度で申請できても、同じ経費の重複申請は認められません。
制作本数・担当人材・公開期限・自己負担額で判断する
最終的な判断は、4つの要素を並べて行います。年間の制作本数が多いほど内製の効果は大きくなり、少なければ外注が合理的です。担当人材がいなければ、ツールは稼働しません。公開期限が近い場合は、補助金の交付決定を待つ余裕がないこともあるでしょう。そして自己負担額は、補助率と上限額から逆算して事前に把握しておくべき数字です。
AI動画制作の事業計画で明確にすべき項目

制作方法が決まれば、次は事業計画の作成です。どの制度でも審査の中心は事業計画書であり、AI動画をどう事業成果につなげるかを論理的に示す必要があります。
現在の事業課題とAI動画が必要な理由
計画の出発点は、自社が抱える事業課題です。たとえば「営業資料だけでは製品の使い方が伝わらず商談が長引く」といった具体的な課題を示します。そのうえで、なぜ動画が解決策になるのか、なぜAIを使う必要があるのかを順に説明してください。
制作する動画のターゲットと利用場面
誰に向けて、どの場面で動画を使うのかを具体的に記述します。新規顧客向けのウェブサイト掲載用なのか、展示会で流す紹介動画なのかで内容は変わるものです。ターゲットの属性や課題を明確にすると、動画の企画内容と経費の妥当性も裏付けられます。
AIの導入によって改善する制作時間とコスト
特にデジタル化・AI導入補助金では労働生産性の向上が制度の目的のため、数値での説明が欠かせません。現状の動画1本あたりの制作時間と外注費を把握し、導入後にどれだけ短縮・削減できるかを見積もります。たとえば「外注で2週間かかっていた制作を社内で3日に短縮する」といった形です。
売上・問い合わせ・商談・採用など測定する成果指標
動画を公開した後に何を測るのかも、計画書で示しておきます。売上高や問い合わせ件数、商談化率や採用応募数など、事業目的に応じた指標を選びましょう。販路開拓が目的なら売上や新規顧客数、生産性向上が目的なら制作時間や人件費の変化が指標です。
補助事業終了後も継続できる運用体制
補助金は一度きりの支援であり、審査でも事業の継続性が重視されます。補助期間が終わった後に、誰がツールを使いどの頻度で動画を更新するのかを明記してください。担当者が一人に偏らないよう、マニュアル化や複数名での運用を計画に含めることをおすすめします。
AI動画制作で補助金を申請する手順

計画の骨子が固まったら、実際の申請手順に進みます。8つのステップで確認していきましょう。
解決したい事業課題と動画の目的を決める
最初に、動画で解決したい課題と目的を言語化します。ここが曖昧だと、制度選びも経費の整理も進めるのが難しくなります。販路開拓なのか、業務効率化なのか、新事業の立ち上げなのかを明確にしましょう。
制作方法に応じて制度と対象経費を絞り込む
次に、内製か外注かの制作方法を決め、それに合う制度と経費区分を絞り込みます。ツール導入ならデジタル化・AI導入補助金、外注なら持続化補助金といった対応関係を前章までの内容で確認します。
公募要領と最新の募集スケジュールを確認する
制度を決めたら、公式サイトから最新の公募要領を入手します。補助率や対象経費は公募回ごとに改訂されることがあり、2026年も複数の制度で要領が改訂されました。申請締切と事業実施期間、実績報告の期限を確認し、動画の公開予定日と照らし合わせてください。
GビズIDなど申請に必要な準備を進める
国の補助金の電子申請には、GビズIDプライムのアカウントが必要です。発行には時間がかかる場合もあるため、早めに手続きしましょう。デジタル化・AI導入補助金では、SECURITY ACTIONの宣言、持続化補助金では商工会・商工会議所が発行する事業支援計画書が必要で、発行締切は申請締切より早い点には注意してください。
見積書を取得して事業計画書を作成する
準備が整ったら、ツール提供会社や制作会社から見積書を取得します。見積もりの取得自体は交付決定前でも問題ありませんが、契約や発注はしないでください。持続化補助金では、発注金額など一定の条件に該当する場合、2者以上から相見積もりを取得する必要があります。第20回公募では、50万円(税込)を超える発注について相見積もりが求められており、事前に最新の公募要領で対象条件を確認しておきましょう。
必要書類をそろえて申請する
事業計画書に加えて、決算書や確定申告書、各種様式などの必要書類をそろえます。制度によっては、賃金引上げ計画の表明書や金融機関の確認書が求められる場合もあります。締切直前は申請が集中しやすいため、余裕を持って提出するようにしましょう。
交付決定を確認してから契約・購入・制作を開始する
採択の通知が届いても、すぐに契約してはいけません。多くの制度では採択後に交付申請を行い、交付決定の通知を受けてから発注・契約・支払いが認められます。交付決定前に契約した経費は、原則としてすべて対象外です。発注も契約も、交付決定日を確認してから進めてください。
制作後に実績報告と証憑書類を提出する
動画が完成して支払いを終えたら、期限内に実績報告書を提出します。契約書や請求書、振込の記録や納品された動画ファイルなどの証憑がそろっていないと補助金額が確定しません。報告承認後に補助金が振り込まれ、その後も数年間の効果報告が求められる制度もあります。
AI動画制作で補助金を利用する際の注意点

手順を理解しても、細かな見落としで補助を受けられなくなるケースは少なくありません。ここでは、AI動画制作で補助金を利用する際に特に注意したい7つのポイントを取り上げます。
AIと記載するだけでは審査上の強みにならない
2026年の公募要領ではAI機能を有するツールが明確化されるなど、AI活用への関心は高まっています。しかし、計画書に「AIを活用する」と書くだけで加点されるわけではありません。審査で評価されるのは、AIによってどの課題がどの程度改善されるかという具体性です。
見積取得と契約・発注を混同しない
見積書の取得は申請に必要な行為で、交付決定前に行って構いません。一方で、契約書への署名や発注メールの送信、着手金の支払いは契約・発注に該当します。制作会社などから「先に進めましょう」と提案されても、交付決定前であれば断りましょう。
登録されていないITツールは対象外になる可能性がある
デジタル化・AI導入補助金で申請できるのは、IT導入支援事業者が事務局に登録したITツールに限られます。海外製のAI動画生成サービスや個人向けプランは、登録されていないことが少なくありません。使いたいツールが決まっているなら、ITツール検索で登録状況を調べてください。
月額・年額費用の全期間が対象になるとは限らない
クラウド型ツールの利用料は、補助事業期間内に支払った分だけが対象です。デジタル化・AI導入補助金でも最大2年分という上限があり、仮に3年契約だとしたら全額が補助されるわけではありません。年額一括払いでも、事業期間を超える分は自己負担になります。
補助金は原則として後払いになる
補助金は、事業を終えて実績報告を提出し、金額が確定した後に振り込まれます。つまり、ツール費用も外注費も立て替えなければなりません。デジタル化・AI導入補助金では、ITツールの支払いを原則として全額一括で行う必要があります。資金繰りに不安があるなら、つなぎ融資も含めて資金計画を立ててください。
採択されても申請額の全額が交付されるとは限らない
採択はあくまで事業計画が認められた段階です。その後の交付申請で経費の内容が精査され、対象外と判断された費用は減額されます。さらに、実績報告の段階で証憑が不十分だった経費も補助額から外れる可能性も。そうしたリスクを織り込んだ資金計画にしておくと安心です。
同じ経費に複数の補助金を重ねて使わない
1つの動画制作費に対して、国と自治体の補助金を重ねて受けることは原則として認められません。ツール利用料と外注費を別々の制度で申請するように、経費を分けることは可能な場合がありますが、申請時に他制度の利用状況を申告する必要があります。
申請前に確認したい、補助金を使わないほうがよいケース

補助金は魅力的な制度ですが、すべての事業者にとって最善の選択とは限りません。ここでは、申請前に立ち止まって考えたい4つのケースを紹介します。
動画の公開日まで時間がないケース
デジタル化・AI導入補助金では締切から交付決定まで1か月半ほどかかり、持続化補助金では採択発表が申請締切の約3か月後とされています。公開期限が優先される案件は、自己資金で進める方が現実的です。
申請と実績報告のコストが補助額に見合わないケース
事業計画書の作成や書類の準備、実績報告には担当者の相当な時間が必要です。たとえば持続化補助金で動画制作費30万円を申請しても、補助率2/3なら補助額は20万円にとどまります。その20万円を得るために作業に膨大な時間がかかるのであれば、費用対効果を冷静に見直したほうがよいでしょう。
対象経費に該当するか判断が難しいケース
ツールの登録状況が不明な場合や、動画の用途が販路開拓とも生産性向上とも言い切れない場合は対象外になるリスクが高まります。相談しても明確な回答が得られないのであれば、無理に申請枠へ合わせるより計画を見直すほうが賢明です。
不採択時に実行できる代替計画がないケース
2026年のデジタル化・AI導入補助金通常枠の採択率は4割程度で、持続化補助金の通常枠も5割弱で推移しています。つまり、半数以上の申請が不採択になる可能性を前提にしなければなりません。補助金がなくても実行できる計画を用意しておき、採択されれば拡大するという考え方が健全でしょう。
AI動画制作の補助金に関するよくある質問

最後に、AI動画制作と補助金について寄せられることの多い質問に回答します。個別の判断は、最新の公募要領と事務局への確認を前提としてください。
ChatGPT・Runway・Adobeなどの生成AIツール利用料は対象になりますか
サービス名だけでは対象可否を判断できません。デジタル化・AI導入補助金では、IT導入支援事業者が事務局に登録したツールとプランに限って対象となります。同じ名称でも、プランによって登録状況が異なる可能性も否定できません。ITツール検索ではAIツールの絞り込みができるため、申請前に登録状況を確認してください。
AI動画制作会社への外注費は対象になりますか
販路開拓を目的とした動画であれば、持続化補助金の広報費やウェブサイト関連費として対象になる可能性があります。ただし、第20回公募からはそれぞれ上限30万円(税込)で、これらの経費単独では申請できません。また制作会社がAIを使うかどうかは、対象可否に影響しないと考えられます。
YouTube動画やSNS広告動画にも利用できますか
用途が販路開拓に結びついていれば、対象になり得ます。持続化補助金では、商品やサービスの宣伝を目的とした動画制作や広告出稿が広報費に含まれる仕組みです。一方で、単なる会社のPRや営業活動に使う広報費は対象外とされているため、動画の目的を計画書で明確にしておく必要があります。
採用動画の制作費は対象になりますか
採用動画は販路開拓や生産性向上と直接結びつけにくいため、国の主要な補助金では対象外になりやすいでしょう。持続化補助金は販路開拓が目的であり、採用目的の動画は原則として該当しません。ただし、自治体の中には人材確保支援や採用活動支援を目的とした助成制度を設けているところもあります。
AIツールの導入研修費は対象になりますか
デジタル化・AI導入補助金では、登録ITツールに付随する導入研修やマニュアル作成、活用コンサルティングが役務費として対象に含まれています。ただし、ツールと切り離された一般的なAI研修やセミナーの受講料は対象外です。従業員向けの研修そのものを支援したい場合は、厚生労働省の人材開発支援助成金など別の制度も視野に入ります。
個人事業主やフリーランスでも申請できますか
申請できます。デジタル化・AI導入補助金も持続化補助金も、対象となる中小企業・小規模事業者の定義に個人事業主が含まれる制度です。ただし、申請時点で開業して事業を営んでいることや、業種ごとの従業員数要件を満たすことが条件になります。
補助金と助成金は併用できますか
異なる経費に対してであれば、併用できる場合があります。たとえば、ツール導入費を補助金で、従業員研修費を助成金で賄うといった組み合わせです。しかし、同一の経費に対して複数の制度から支給を受けることは認められません。併用を考える場合は、事前に各事務局へ確認しておきましょう。
まとめ|AI動画制作の目的と経費を整理してから補助金を選ぼう
AI動画制作に専用の補助金はなく、事業目的と経費の種類に応じて既存の制度を選ぶことが基本です。ツール導入による内製化ならデジタル化・AI導入補助金、販路開拓動画の外注なら小規模事業者持続化補助金が候補になります。新製品開発や新事業を伴うなら、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金も検討対象でしょう。いずれの制度でも、登録ツールの確認や交付決定後の契約、後払いといった実務上のルールを守らなければ補助は受けられません。補助金の有無にかかわらず、動画施策を続けられる運用体制の設計も重要です。公開期限や申請コスト、不採択時の代替案を踏まえたうえで、自社に合う制度と次の行動を決めてください。
オールイン株式会社が提供する映像制作サービス「ALLIN STUDIO」は、AI制作と実写撮影を組み合わせ、目的と予算に応じた最適な手法で映像を制作します。定型動画の量産から、ブランドの世界観を表現する本格的な映像制作まで、一気通貫で対応可能です。「どこまでAIで対応できるか」「実写が必要な案件はどう進めるか」といったご相談から、お気軽にお問い合わせください。